━例によって書くに連れて1回が長くなりそう…
20191130-01

センジマンだ!

やっとの事で書いた第1話でしたが変身する所までいけませんでした@@

今回はどこまで書けるかなぁ。

第1話 第3話(次)


※この物語の世界設定等はオンラインゲーム「Final Fantasy XIV」に準ずる部分が多く含まれます。ただ…ファンタジーな設定は余り出てこないかもしれませんのでご注意下さい。なるべく体験談や事実を元にして行こうと思いますが人物名称等は実在の物とは違う物もあり、時系列も前後したり完全にフィクションの部分も多々あります。


『ヒーロー戦記エオレンジャー』第2話「エーテルチェンジ」



『ボクの声…やっと気づいてくれる人が居た…もうハナサナイゾ…』


腕輪に遮られてセンジマンにその声は届かなかったが…その「声」は完全にセンジマンを認識していた。

・・・

ウルダハに戻ったセンジマンはクイックサンドでモモディに冒険者として認められ~素行の怪しさに一時は国外追放の危機に陥りつつも~晴れて冒険者としてエオルゼア諸国を旅する事となった。


「どこもかしこも人だらけ…なんでおじさんだけあんな実験の道具にされかけてたんだろうなぁ」


他人が皆どこか何の不幸も知らない様に~実際超える力で流れ込む記憶は自分の体験したそれとはかけ離れて感じた事もあり~見えてどうにも得心が行かない。だがセンジマンはヒーローなのだ、自分の感情は腹の底に仕舞い込んで今日も笑顔で街を見守る。


「うんうん。どんぐり広場の良い子のみんなも楽しそうだしエーテライトプラザの周辺も特に問題はないな。今日も平和平和!平和が一番。」


ウルダハから北東に位置する黒衣森~こくえのもり~にある国グリダニアでセンジマンはいつもの様に辺りを確認していた。冒険を始めてから立ち寄ったグリダニアの緑の多さが気に入ったのだ。


「やっぱり木陰っていいよね。何か懐かしい気持ちになるんだよなぁ…」


ふと、郷愁にふけりつつも記憶が無いのでふけり切る事も出来ない。ため息をつきながら空を見る。


「…また来ちゃったのか…超える力…今日のは久々にキツめだな…」


側にある花屋の裏手に何とか移動するとどかっと座り込んで「超える力」をやり過ごそうとする。しかし意識が徐々に飲まれその「記憶」…いや「想い」の中へと滑り込んでいった。


『あいつ…許せない…なんであんな事…』


~~誰の記憶だ…。腕輪のお陰で何とか意識は保てているけどこれは結構な黒い感情だ…


センジマンは心の中で気を引き締め直し精神を研ぎ澄ませていく。ぼんやりとした「声」は次第に鮮明なものになっていった。


・・・


「何で言ってくれなかったんだよ!このままじゃ落ちちゃうじゃないか!!」


小柄なララフェル族の男~ララフェル族は成人しても人間の子供のような容姿である~が崖から落ちそうになりかろうじて両手で崖に掴まりながら叫んでいた。


「見てたら分かるじゃんそこに崖があるって。よく見ずに走っていくからじゃない?どっちが悪いか普通分かるよね?」


叫び声の向こう側、崖の上に居るアウラ族~人間に近いが身体に鱗や頭に角が生えている種族~の女性がララフェル族の男を見下ろしながら淡々と答えていた。


「最初にいったじゃないか!ここに来るのは初めてなんだ。って!…すみません…助けてくれませんか…」


しょうがない、と肩をすくめてからアウラ族の女性はララフェル族の男を助け起こすが何も言わない。「ありがとうございます」の言葉にも返事もせず目的地へと歩き出した。


「下調べくらいしろっての。」彼女は任務が終わった後吐き捨てるように言うと去っていった。


・・・


~~これは…うわぁ。時々ある事だけどなかなかに大変な記憶に遭遇しちゃったな。アウラの女の子が去った跡…なんだあれ?


センジマンは「アレ」が気になり「アレ」に集中しようとしたが…超える力は「見える」だけのちからなのでどうにもうまく行かない。しかし確かに「アレ」が気になる物である事は間違いない。立ち去った跡に残った「アレ」から感じる「黒い気配」。そしてその「アレ」はララフェルの男の周囲にもまとわり付いていた。


~~ウルダハで感じたアレよりは弱いけど似た感覚の物だな…。こういう時にあのいい人そうな方の「声」聞こえてきても良いと思うんだけど…あっちも気まぐれだからなぁ…。


すると「あっちのいい人そうな声」がセンジマンに答えた。


『私は気まぐれな訳ではありません…あなたへのチャンネル同期には少々エーテルパワーを消耗するので頻繁には行えないのです…細かい説明はまたしますが今あなたが感じた「アレ」を排除しなければなりません…健やかな世界の邪魔にならないように「アレ」を…ちょっと邪魔なんですけど!?』


「うわ!…あぁすみません!ちょっとエーテル酔いで…すぐどきますね!」


またもや後半のセリフが花屋の店員が荷物を置こうとしてセンジマンが邪魔で困っている部分と混ざってしまった。センジマンは我に返ると苦笑いをしながらその場から離れた。


「ホント困るのよねぇ…最近エーテル酔いの冒険者人多くない?もうこっちは真面目に仕事してるってのに…ぶつぶつ」


花屋の悪態を背中に浴びながら立ち去るのはどうにもヒーローらしくないが仕方ない。センジマンはなるべくうつむかないように、なるべく元気な感じを周囲にアピールしながら広場のベンチに座った。


「しかしさっきの「アレ」を排除ってどういう…そうか!それがおじさんに架せられたヒーローとしての使命なのか!?」


センジマンは天を仰いで声を待つ…が今度は何も聞こえてこない。それに「アレ」をどうやって排除するのか方法も分からなければさっき「見た」場所さえ分からない。初手で手詰まりの状態だった。


「あーあ。おじさんの知ってるヒーローの感じだともうちょっと説明が分かりやすいんだけどなぁ…なんかさ?こう妖精さんみたいな?マスコット的な?!何かそういう可愛らしいのがヒーローとしての役目とか変身してパワーアップだー!とかさ?教えてくれるんだけどなぁ…」


センジマンは自身の記憶は殆ど無いが「ヒーロー」についての情報だけは何故かわんさか浮かんで来た。帝国の実験の中でソーセージを作る以外の能力も覚醒している為なのかは不明だが。


「あれだな『ジーっとしててもどうにもならねぇ!』って言葉もある位だしとにかく…森に出て崖っぽい所探索してみるか!」


だれの格言か分からないがその言葉を思い出すと何だか勇気が湧いてくる。センジマンは早速中央森林へと向かった。


・・・


「ここかな…?ちょー崖っぽいんですけどー!」


ベントブランチ牧場から少し西に向かうとかなり高い所まで行ける。その先はいくつかの断崖があった。おぼろげながら見覚えがある…「アレ」を見た場所だ。センジマンは崖から落ちない様に慎重に辺りを見渡した。


崖にばかり注意を払っていたのでセンジマンはうっかり周囲のモンスターに気づかれてしまった!


「うお!トサカお化け!!こうなったらあの技を出すしかねぇ!いくぞ…バディーーーゴー!」


右手を下げ大きく屈んでから拳を突き上げる仕草でセンジマンはバディチョコボを呼び出し戦いを有利に進めた!


~~~説明しよう!バディチョコボとはある一定の能力を認められた冒険者がチョコボ~馬のように大きなトリ~をお供にして一緒に戦う事が出来る能力でありヒーローじゃなくても頑張れば会得できる物なのである!


・・・


「ひー。危なかったぁ。いつもありがとうセンジバード!これご褒美の野菜ね!」


どーどー、とセンジバード~バディチョコボの名前らしい~の首をなでてからチョコボの好物であるギサールの野菜をセンジバードに食べさせる。「ちょっとそこで待っててな」とチョコボをなだめるとセンジマンは探索を再開した。


崖の近くの木の洞~うろ~にアレに似た気配を感じでセンジマンは腕輪に意識を集中させた。超える力が発動していない事を確かめるとゆっくりと木の洞に近づいていった。


「これ…「アレ」だな。完全に「アレ」だわ…こいつをどうしたらいいんだ…?」


「だ」の辺りで振り向いてみたが誰も居ないし声も聞こえない。少し離れた所でセンジバードが「クエッ」っと鳴いた。


「エーテリングパワー足りてろよ!!…しょうがないもうちょっと近くで…うっ」


悪態をつきながら近付こうとした瞬間良くない方の「声」が聞こえてきた!


『また会えたね…!アソボ…!ボクと…アソボ!』


瞬く間にセンジマンの周囲に「アレ」がまとわり付く!「アレ」は容赦なくセンジマンを覆い尽くすと心底安心したようにつぶやいた。


『何してアソブ?…何をコワシテアソブ…?』


~~やばい!ちょーやばい!!これっておじさんが声に支配されて世界滅ぼしちゃうぞ系ヒーローに成り果てる流れ…まだ変身も出来てないのに!!…とか言ってる場合じゃないやばばオブやばば!


『さっきの子たちはボクに気づく事もなかったけどやっぱり…キミは違うんだね…ウレシイ』


「ちょ…いやいやいや!なーんにーもきーこえーませーん!おじさん…なにもーきーこえーないー!よー?」


聞こえない事のアピールが聞こえている証拠になるのは承知の上だが一応…センジマンは否定してみた。とにかくこの状況を何とかしなければ本当にマズい事になってしまう。


「あれ…腕輪の所…避けてね?」


センジマンはふらつきながらふと腕輪を見るとそこだけ「アレ」がまとわり付いていない事が分かった。やはりこの腕輪の赤い宝石は「アレ」が嫌う何かがあるらしい。


『この赤い宝石ジャマだよぅ…どけてよぅ…ね?どけよ?』


センジマンはその言葉を聞いて確信が持てた。この宝石の力を体中に纏わせれば「アレ」~今は「コレ」の方が正しい気もするが~を何とか出来るかもしれない!


「よし…勇気だ!ヒーローは勇気を…ブレイブで悪を跳ね返す事が出来るんだ…!おじさんを…舐めるなよ!!」


そう叫ぶと実験の時に散々やらされていてもう絶対にしたくなかった「帝国式敬礼」~それで実験され様々な謎の能力が勝手に目覚めていたので本当に厭だったが~の仕草を…腕輪を胸の前に掲げ…思いついた言葉を叫んだ。



『星の力よ…エーテルチェンジ!!』



腕輪から赤い光がほとばしるとセンジマンの身体を光が覆い尽くしていく!


『ダメだよその力…ボクが…消エちャう…!!』


赤い光がスーツ上になり体を覆い「アレ」が堪らずセンジマンから離れた。


「ふぅ…この光の力があれば…お前をきっと…止められる!」


センジマンは両手を高く天に突き上げもう一度叫んだ!



『マスク・オン!!』



まだ覆い切れていなかった頭部を赤い光がマスク状に固まっていく。そう…センジマンは「変身」したのである。


『星の力は正義の証…エオレッド・センジマン!!』


センジマンは心の中でも叫んでいた。


~~~実験施設に居る時暇で暇で練りに練ってたキメ台詞初めて言えたぞ!!!楽しいなこれ!!


『なんで…ボクの事…イジメルの…?』


「おいアレ!…アレって流石に呼びにくいな…決しておじさんはアレの事をいじめようとは思っていないぞ!そらアレだアレ…あぁ今のアレはお前の事じゃなくてアレだってば!…あぁややこしい!!」


センジマンは「アレ」にちょっと待ってくれと手で制してからしばらく考え込んだ。


~~多分この「アレ」はマジヤバのアレよりはちょこーっとだけ力が弱まって感じるからきっと「本体」じゃないんだろうなぁ…って事は今決着を付けても次がある…って事は次も「アレ」って呼ぶことにしておくと「おいアレ!お前をアレするぞ!」って言うとどのアレがどっちのアレかまたややこしくなるから何か別の言い方考えないとダメだよなぁ…うーん…。


『センジマン…私の声が聞こえますか…?センジマン…先程のギスギスの原因になった「アレ」を近くに感じます…気をつけt』


「割と遅い!!!もう大体何とかなりそうな所まで自力で着たんですけど?エーテルパワーもうちょっと何とかなりませんかねぇ?!まてまてまて…ギスギス…そうか!ありがとういい人の方!!」


センジマンは「アレ」に向き直ると「アレ」を指さして言った。


「今日からお前は『ギース』だ!人々の心の闇に付け込んではいけない!おじさんが相手だギース!」


ギースと呼ばれた「アレ」は少し戸惑いながらも答えた。


『ボク…ギース…名前付けてくれたんだね…ギース…ギース…』


「ちょっとうれしそうにするんじゃねぇ!!戦いにくいじゃないか!…でも根は悪い奴でもないのか…でも多分本体じゃないから申し訳ない気もするが倒させてもらう!」


センジマンはそういうとエーテルチェンジャー~突然ですが腕輪の事です~を変身したグローブごしにギースにかざし邪気を払おうと試みた。


「邪気…退散!!」


するとギースは一点に集まり抵抗したが徐々に小さくなっていった。


『ボク…ボクは…』


「大丈夫だ。おじさんはお前の事を覚えた。もう誰も知らないわけじゃない。でもまた悪さをしてしまうのならおじさんは何度でも止めに行く。多分…キミも「良い子のみんな」なんだろうから。」


そういうとセンジマンはより一層エーテルチェンジャーに「想い」を込め、そしてギースは消えて行った。


「これにて1件…コンプリート!…しかし疲れるなこれ…。」


木陰にドサっと倒れ込みセンジマンは束の間の眠りに付くのであった。


『センジマン…聞こえますか…?って寝てるのですか…風邪をひきますよ…』


いい人の方の声が大きな葉っぱを風のエーテルで運びセンジマンの身体にそっとかけた。


・・・


~いっぽうその頃~


グリダニアの入り口にある「カーラインカフェ」に一人のアウラの女性がもじもじしながら入ってきた。待ち合わせの相手はララフェルの男性。待ち人を見つけるが伏し目がちに…そそくさと隣の席に座った。


「急に呼び出してごめんなさい…あとこの前も本当にごめんなさい。昔のダメだった自分が重なってしまって酷い事を…。本当にどうしてあんな言い方を…」


言い終わる前にララフェルの男性はアウラの女性の口に自分の人差し指を当てウインクしながら答えた。


「ボクが経験者のキミを信じすぎたのも悪いんだ…。言い方は怖かったけどちゃんと悪い所を教えてくれてありがとう…これからも頼っていいかな?」


「…もっもちろんよ!!私製作も得意だから今度新しい装備一式作っておくね?…えと。次会う時にわたすから…よかったらその…フレンドに…。」


カーラインカフェが心なしかいつもより温かいのは気温の変化のせいだけではない様だ。


~続く~

第1話 第3話(次)

また会おう良い子のみんな!